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カルアーツ合格記07話:美術解剖学のはじめ方。

投稿日:2018年3月25日 更新日:

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このシリーズは、海外美大留学や絵の勉強法方に関するノウハウではなくて、その名の通りぼくのカルアーツ合格体験記です。今回は2016年3月頃のお話。

 

 

アトリエに通い、デッサンを通して絵を描くと良いう行為の基本を学んだ後は、より人物の描写に特化した勉強にシフトしていきました。

 

 

これは無論カルアーツをはじめとした海外美大の受験対策のため。アニメーション学科の受験において、人物を5分~20分という短時間で描写する人物クロッキー(life drawing)を提出するのが必須だからです。



何をどう学べば人物クロッキーがうまくなるのだろうか・・・

ぼくは以前通っていた美術予備校で、とにかくクロッキーを描いてそれを先生や他の人に見せて講評をもらう、ということをひたすら繰り返していました。しかし正直この練習方法には限界と疑問を感じていたのです。もっと正確に言うと、当時の自分の実力と練習内容にギャップがあった、という感覚です。

 

 

例えば、人体のプロポーションが狂っているという講評をもらったとします。その講評自体は非常にありがたいのですが、人体のプロポーションが狂っているという事実だけでなく、人体のプロポーションが狂わないための包括的な対策や方法が知りたかったのです。

 

 

今の自分が【絵を描く→講評をもらう】という行為を繰り返していても、もぐらたたきにしかならない。もちろん量をこなすことは大前提だけど、まずは絵が下手くそだという根本的な原因にアプローチする必要がある。一体どうすれば良いのか、どこかに近道のヒントや情報は落ちていないかひたすらネットや書籍を漁りました。

 

 

美術解剖学との出会い

そんな中、ある日ひとつの疑問が浮かびました。過去の偉大な芸術家たちは絵の技術をのばすためにどんな練習をしていたのだろうか?そこにヒントがある気がしたのです。

 

 

調べて分かったことは、彼らは人体へのあくなき探究心を持っていたということ。美術史上の偉大な巨匠で美術解剖学を一切学んでいない画家などいませんでした。

 

 

今より圧倒的に情報が不足していた時代に、文字通り人体を解剖し、ゼロから美術解剖学を学問として体系化していった彼ら芸術家たちの功績ははかりしれません。何もない状態から人体構造を理解するためには途方もない時間と努力がいる。もはや想像すらできない。

 

 

でも現代ではこれらの全ての情報が整理され、多言語化され、誰でも超簡単にアクセスできる時代になりました。昔よりも圧倒的短時間で人体解剖学の勉強ができる。なんてめぐまれた時代なのでしょうか。

 

 

だったらもうやるしかない。結局絵の向上に近道などない。人体の勉強もろくにせずに、人間を描きたいなどと言っていた自分が恥ずかしくなりました。ついにぼくは、時間をかけて本気で美術解剖学を学ぼう、と決心したのです。

 

 

ゼロからの美術解剖学!何をすればいい?





美術解剖学と言っても、実際に何をすればいいのでしょうか?とりあえず書籍を斜め読みすれば良い?書籍を斜め読みするだけでもやらないよりずっと良いと思いますが、ぼくは実際に手を動かす方法を選びました。

 

 

具体的に言うと

  1. 美術解剖学書を読み知識を学び、基本的な骨格の構造と大きさの比率を理解する
  2. それをもとに人体標本のモデルシートを作成する

という方法です。

 

 

これが実際に作成したモデルシート(髭猿私物)。

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これは当時通っていたアトリエの先生から薦められた方法で、前・横・後ろの3方向から、骨格/最下層の筋肉/中間層の筋肉/上位層(一番肌に近い)の筋肉をアクリル絵の具で描写しました。

 

 

骨格の比率や角度は、人体の男性平均値になるようにちゃんと測って描きました。3方向×4種類なので合計12枚のモデルシートを作成。全工程を終えるのに4ヶ月程かかりましたが、劇的に人物クロッキーが改善されました。以下からぼくが勉強した方法の詳細です。

 

 

1.基本的な骨格の構造と大きさの比率の理解

まずは骨格に関する基本的な事を学びます。アーティストのための美術解剖学を読みつつ、先生から教わりつつ、知識を蓄えていきました。そして骨格のモデルシートを作成しました。

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知識はバカにできません。知っているだけで絵が変わります。特にぼくみたいに絵の初心者ならなおさら。例えば以下を例にとってみましょう。

 

 

・胸骨と骨盤の間のスペース

頭蓋骨の縦の長さを1とすると、胸骨と骨盤のスペースはなんと0.2しかありません!実際に自分のこぶしを当て込んでみれば実感できますが、こぶしが置くまで入らない程の狭さです。絵がいつも胴長になってしまう人は、これを知っているだけで多少プロポーションが改善されます。

 

 

・手の大きさ

クロッキーを描いていると、手が小さくなりがちなことが多いです。これも知識で多少カバーできます。自分の手の平を顔に当ててみて下さい。手って、実は顔を覆えるくらい大きいんです!普段、自分の手は目から多少距離がある位置で見ているため、ぼくたちはどうしても実際の大きさより小さく認識してしまっています。これを踏まえた上で自分の絵を見返してみて下さい。顔と同じくらいの大きさになるように手の大きさを修正すると、これまたプロポーション改善につながります。

 

 

・腕の長さと足の長さ

こちらも知っているだけで絵のプロポーションが整う知識。足(爪先からかかとまで)も手と同様で、絵を描く上でどうしても小さくなりがちです。これも普段足を見下ろす事しかないので、どうしても実際の長さよりも短く認識しているからです。足の長さは腕の長さ(手首から肘まで)と大体同じくらい。体が柔らかい人は自分の足を腕にあててみて下さい。

 

 

え、そうなの?!とびっくりした事程、簡単に記憶に定着します。ぼくは胸骨と骨盤の間の狭さを知ったときは衝撃でした。その衝撃が大きかったからこそ、絵を描くときに気を付けることができるようになりました。

 

 

人物クロッキーを描く上でプロポーションが崩れてしまうのは理由があるし、知っているだけでそれを防げる知識もたくさんあります。頭の長さを1として、全身の骨の比率を一度きちっと勉強したことは非常に助けになりました。

 

 

2.顔から足の爪先まで、全身の主要な筋肉を学ぶ。

骨の次は筋肉です。筋肉を学ぶ上で大切な要素は3点あり、

 

・筋肉の始点

・筋肉の終点

・筋肉の役割

 

です。その筋肉が骨のどこからどこについていて、どんな動作をするためのものなのか、ということを勉強していきます。ここでも全身の筋肉について学びながら、モデルシートを作成しました。

 

 

体の一番内側、真ん中、外側の3層を前横後ろの3方向から。

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筋肉に関してはアーティストのための美術解剖学だけでなく、

 

Artistic Anatomy: The Great French Classic on Artistic Anatomy (Practical Art Books)

 

 

という書籍も活用して勉強しました。また、より詳細かつ正確な情報が欲しいときは先生から医学解剖学書を借りたりもしました。

 

 

3.美術解剖学書の模写

骨格の比率や筋肉に関する情報の復習と知識の定着のため、モデルシートの作成と並行して美術解剖学書の模写も行いました。骨格や筋肉を学んだ上で模写すると、なぜそこに線があるのか理解できるようになっていたので、非常に効果的な練習法でした。

 

 

また、クロッキー会に参加する際は自分で作成したモデルシートと美術解剖学書を常に持参して、その場でモデルさんと見比べながら、理解を深めました。

 

 

他の記事でもご紹介してますが、美術解剖学書の模写に関しては、以下の書籍を活用しました。

 

 

Artistic Anatomy: The Great French Classic on Artistic Anatomy (Practical Art Books)

既に上述してますが、個人的に一番おすすめなのがこれ。洋書なので英語が苦手な人は嫌煙するかもしれませんが、例え英語が分からない方でも一見の価値があります。

裸体の男性がポーズをとっている絵と、同じポーズで体内の筋肉がどのように伸縮しているかという絵がセットで多数掲載されていて、模写するのにぴったりだからです。

ぼくは以下の方法で模写することで、肌の上から内部の筋肉の存在を捉えるトレーニングをしました。

  • 筋肉の絵を隠し、男性のポーズ絵を模写する(内部の筋肉の構造や伸縮をイメージしながら)
  • 自分の模写と筋肉の絵を見比べ、筋肉の始点・起点・起伏を正しく描けているか確認する

これにより、教本で学んだ筋肉の知識がより定着していくので、本当におすすめです!

 

 

Bridgman’s Complete Guide to Drawing from Life

ジョージ・ブリッジマンの線も非常にバランスが良く、解剖学的でありながら、リズムやメリハリの示唆に富んだ線は圧巻です。たぶんこの本を一番模写したかもしれません。もちろん今でも模写しています。カルアーツのライフドローイングの授業でも参考図書として紹介されました。ぼくが美術解剖学を学んだ先生の先生の先生がジョージ・ブリッジマンということもあり、個人的に胸アツな一冊。

 

 

カルアーツのキャラクターアニメーション科のdirectorでもあったグレン・ビルプさんは、ディズニーや海外の有名な大学でドローイングの指導をするほど世界的に有名なアーティストで、彼のライフドローイングは解剖学的でありながら、ポーズのダイナミックさと生き生きとしたリズムに溢れているのが特徴です。もうため息が出るくらい美しい。この本に掲載されている彼のドローイングは短時間で描いたものが多く、体の内側から描かれているプロセスが分かりやすいので、非常にクロッキーの参考になります。

 

 

アナトミー(美術解剖学)を4ヶ月に渡りほぼ毎日みっちり勉強していた終盤、解剖学的なドローイングに拘りすぎて、絵が硬くなってしまった事がありました。リズムやダイナミックさが欠落していたのです。そんな時に書店で目に飛び込んできたのがこの本。表紙を見た瞬間に『今の俺に必要なのはこれだ!!』と思い即買いしました。結果、大当たり。モデルのポーズの意味を理解し、少しデフォルメするような描き方をしている本書は、自分の絵の勢いやリズム、メリハリなどの要素を強化したいなら必見の書です!この本を模写した事により、線の伸びがよくなり、弾力があるような線が引けるようになったと思います。この本に掲載されているスタイルは非常にカルアーツ好みのスタイルでもあります。

 

 

まとめ

こんな感じで4ヶ月程みっちり美術解剖学を勉強しました。海外美大受験に向けポートフォリオ作成をしなければという焦りもある中で、4ヶ月という時間を美術解剖学だけに投資するのはなかなか勇気がいる決断でしたが、今となっては良い判断だったと思います。

 

 

これをきっかけに人物クロッキーのレベルがグッと上昇しました。また他の人からの講評を受けた際に理解できる事も増えたので、フィードバックをより実りのあるものにすることもできました。

 

 

そして気が付けば季節は夏に変わろうとしていて、海外美大への出願まで、残り約半年となっていたのでした。つづく。

 

 

前の記事はこちら。

カルアーツ合格記06話:仕事に必要だったであろうことは全て、仕事を辞めた後にデッサンが教えてくれた。




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