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カルアーツってどんな大学なの?カルアーツOBの現役3Dアーティストにぶっちゃけてもらった!

投稿日:2017年6月4日 更新日:




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ついに、かねてから温めていたコラボレーション企画が実現!

 

 

カルアーツを卒業後、アメリカでクリエイターとしてご活躍中のLeo Ogawa Lillrankさんに、インタビューさせて頂くことができました!

 

 

Leoさんはツイッターでもいつも留学相談やアニメーション界のフレッシュな情報を流して下さっているので、ご存知の方も多いかもしれません。

 

 

今回はそんなLeoさんにカルアーツの事を色々伺いました!

※本記事中の画像は全てLeoさんの作品です。

 

3Dアーティスト Leo Ogawa Lillrankさん

髭猿:今までの経歴と自己紹介をお願いします。

 

Leo:日本とスウェーデンのハーフで、スウェーデンの高校で美術を習いました。元々は漫画家志望でしたが、ジブリがきっかけでアニメーションに転向して、高校時代にアニメーション映像を作っていました。そのほかにはスウエーデンのTV会社で役者としても少し活躍していました。

高校卒業制作のアニメーションで世界4大アニメーション際のひとつであるオタワ国際アニメーション祭に入選、その後、カルアーツに入学して、在学中は数回日本のアニメーションスタジオで働いていました。ITOON、スタジオ4c、白組でお世話になりました。

カルアーツ在学中にインタラクティブメディアがきっかけで2Dから3Dに転向し、カルアーツを2013年に卒業後、3Dアーティストとしてカリフォルニアのゲーム会社やアニメーション会社で働いています。こんな感じでいいでしょうか。

 

髭猿:ありがとうございます!素晴らしい経歴でちょっとビビりました(笑)

 

Leo:いえいえ、そんな(笑)

 

髭猿:アニメーションで有名な大学は様々ありますが、カルアーツを選ばれた理由は何ですか?

 

Leo:元の発端は地元のスウエーデンで2Dアニメーションを教えている大学がすべて廃校になったことですね。今は3Dアーティストですけど、当時はクラシックな2Dがやりたかったんです。

国内ではもう勉強できなかったので、必然的に海外へ目を向けるしかなかったんですね…。これが高校二年のころですね。

まずはリサーチとして海外の高校生向けアニメーションサマースクールを探しました。そこでカルアーツが夏休み中、高校生向けにやっているCSSSA(California State Summer School of the Arts)というのを見つけて高校二年生の夏に4週間通い、その時カルアーツを進められました。CSSSAはカルアーツのキャンパスでやっていて、内容もカルアーツのアニメーション科に似た物だったので大学受験に役立ちました。

それでカルアーツに決めたんです。ヨーロッパ出身なのでゴブラン大学、という選択肢もあったのですが、当時はフランス語を習うのがいっぱいいっぱいで…結果カルアーツになりました。

カルアーツを志望する人の多くはディズニーやピクサーに憧れて色々調べていく過程でカルアーツを知ると思うのですが、全然そうではなくてすみません(笑)

 

髭猿:確かにカルアーツを志望する人はとにかくディズニーやピクサーに入りたいという人が多いですよね。アニメーションがやりたいんじゃなくて、とにかくディズニーに入りたいみたいな。

 

Leo:あーそれはありますね。アニメーションやりたいって言いながらディズニー作品しか見ないで、フランスアニメーションは全然興味ないとか。

 

カルアーツの強みは?シェリダンやアートセンターと比較してどう?

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髭猿:実際にカルアーツを卒業されて、他の大学と比較してどういった部分がカルアーツの強みだと思いますか?

 

Leo:カルアーツの強みは自由があるということ。あと環境がとても良いですね。

 

髭猿:教授や学校の設備が整っているということですか?

 

Leo:いえ、生徒のパワーが物凄くて、そこから学べることがとても多いんです。特に同級生、上級生のエネルギーやアイディアは本当に凄い。もちろん教授や設備も整っているんですけど。

 

髭猿:なるほど。カナダで有名なアニメーション系の大学のシェリダンなどと比べるとどうですか?

 

Leo:あくまで通っていた一人からだけ聞いた話で、実際に行ったこともないので100%確証はありませんが…友人から聞いた話だとシェリダンは自由があまりないみたい。良くも悪くもかなりディズニー的な画風の作品作りをさせるそうです(質量重視、立体感のある画風)。演技の方法も90年代風、良い意味でクラシックなアニメーション作りって言うのかな。そういう感じがあるみたいですね。

反対にカルアーツには自由がある。ディズニーの学校と言われがちだけど、実は画風は何でも良いんです。だから放任主義と言わていますね。本当にすごい放任主義。だから、教育ではなく環境を得るために学費を払っていると認識した方が良いかもしれないくらいです。自分で探究しなければないらない。逆に言うと弱みとしては卒業生のスキルに凄いばらつきがあること。放任主義だからこそです。待ちの姿勢の人は4年間でのびないですね。

 

髭猿: シェリダンとは全く違いますね。日本だとアニメーションと言えばカルアーツという風潮が非常に強いですけど、ニューヨークではアートセンターやSVAを志望する学生も多くて、カルアーツ最強って感じではまったくなかったんですよね。そこら辺の認識ってやっぱりアメリカと日本だと違うんですかね?

 

Leo:ごめんなさい、SVAのことは実はあまり分からないんですけど、アートセンターはとても良い大学です。イラストが強いから、コンセプトアーティストやビジュアルデベロップメントがやりたい人は、カルアーツよりもぴったりだと思います。入学時点でやりたいことがはっきりしている人はアートセンターの方が良いかもしれないですね。

アートセンターを出た人はコンセプトアーティストが多くて、シェリダン出身の人はディズニーやドリームワークスのアニメータが多い印象です。

 

どうしてカルアーツは合格率が低いのか

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髭猿:カルアーツは合格率の低さから難関校として有名ですが、どういった部分に難しさがあると思いますか?

 

Leo:そもそもカルアーツのキャラクターアニメーション学科はOBが有名だから認知されているのであって、何を勉強しているのかはあまり認識されていないと思うんです。実際のところ、アニメーションをやりたい人でもティム・バートンやジョン・ラセターの母校であることくらいしか知らないですよね。だから普通の美大としてみんな受験してしまう。落ちる人が多いのはそれが原因なんじゃないかな。

キャラクターアニメーション学科はファインアートではなくて、基本的には商業アートだということが大前提。それに『カルアーツは絵を習いにくる学校ではなく、既に絵をそこそこ描ける人が映像作品を習いにくる学校』だとカルアーツもよく公言してますし。自分の絵を動かす準備がある人でないと合格できないと思います。そこの方向性が違っている人が落ちてしまう。あくまで画力のせいではない人もたくさんいて、そこは気の毒です。

 

髭猿:確かにそうですね。1ヶ月描けて大作を描きあげるような芸術とは違うことが求められますよね。アニメーションは素早く人体を描写するスキルが特に大事になりますが、受験のときはどのようにドローイングの勉強をしましたか?

 

Leo:美術史も含め、アートの基本的なことはスウェーデンの芸術高校で学びました。でもカルアーツのサマースクールに参加したときに、ただ描けば良いだけでなく、動かすことが大事だと学んでから考え方が変わったんです。プロポーション、シェーディングが全てではないと。もちろん観察力は大切だけど、アウトプットとしての写実性はそこまで大切ではないと理解してからブレイクスルーできたと思います。

ちなみにサマースクールではクロッキーやデッサンなどの練習、特にスケッチブックでは鉛筆で描かないほうがいいと言われました。ペンやマーカーなどの消えない画材で描くことで自分の間違いを残すことができる、そこから学べることがたくさんあると教わったんです。

 

 

受験時対策の話

髭猿:やっぱりスケッチはたくさんやりましたか?

 

Leo:カフェテリアドローイングは結構やりましたね。スタバでとにかく目の前の人を描くって感じで。全体ではなくて、面白いと思ったところを中心に描く。スピード感を重視して、魅力ある瞬間を切り取るように心がけました。

 

髭猿:模写もやりましたか?

 

Leo:そうですね。好きな絵を模写すると何故その絵が好きなのか分かるし、ただ観る以上に多くの事を学べるので良いですよね。線の少ない現代アートも、模写をすると実はその絵はネガティブスペースの面白みに魅力があると気が付いたりしますし。本当に勉強になる。コンセプトアーティストの新川洋司さんの絵は結構模写したと思います。

 

これからカルアーツを目指す人たちへ

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髭:これからカルアーツを目指す方たちにアドバイスはありますか?

 

Leo:視野を広く持つことが大切だと思います。アニメーションの人は特に視野が狭くなりがち。スタイルはどんどん変わるものだから固定観念にとらわれていてはその一部になることはできません。

ベイマックスなんかまさにそうですよね。お姫様も王子様もいないロボットアニメがディズニーから出てくる時代になった。今後ファインアート的な流れになるかもしれないし、どうなるかは分からない。それにキャッチアップしていくにはやはり視野を広く保ち、色んな事を吸収する姿勢が大切だと思います。

また、今中学生の人は、できれば高校生の間にアメリカへ行って日本との違いを体験してきたほうが良い。アート意外の事も含めて多様性に触れた方が良いと思います。

あと、キャラクターアニメーションがやりたい人は今からアニメーション作品をつくってみてって言いたいです。本当にアニメーションをやりたいのか、ただディズニーに入りたいだけなのかを見極めるきっかけになるからです。

既に合格した人は、自分の作業場に閉じ籠らず、積極的に外の世界と関わりましょう!

 

髭猿:貴重なお話をたくさんして頂き、ありがとうございました!

 

まとめ

やはり実際にカルアーツを卒業してアメリカで3Dアーティストとして働いている方のお話は非常に参考になりました!

 

 

というか本当に親身にアドバイスをくださって感動した。

 

 

Leoさんも今までたくさんの人に支えてもらってきたからこそ、自分も積極的にサポートしたいという思いがあるそうです。

 

 

Leoさんの作品はオフィシャルウェブサイトから見ることができるので、是非チェックしてみてください。

 

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