このシリーズは、海外美大留学や絵の勉強法方に関するノウハウではなくて、その名の通りぼくのカルアーツ合格体験記です。
4ヶ月かけてアナトミー(美術解剖学)を一通り勉強した結果、かなりクロッキーが安定してくるようになりました。
プロポーションが大きく狂うこともなくなり、人間を描いているとちゃんと認識できるぐらいまでにはなった。
アナトミー学習前
アナトミー学習後
しかし何か魅力に欠ける。どうも画面が面白くない。
フォースを意識したドローイングを取り入れる
何かヒントはないかと本屋でドローイングの本をあさっていたときに見つけたのが、このブログで何度も紹介しているリズムとフォースという本です。
この本には、ただモデルさんを見たまま描写するのではなく、ポーズの勢いや力の入り具合を感じ、それを誇張して表現するアプローチについてまとめられていました。
ときにはアナトミーを無視してリズムとフォースを誇張して描いた方が、モデルの姿勢や迫力が伝わりやすくなる。
そういう発想は今までなかった。これは良い、絶対勉強になると思い即購入。それから毎日家でこの本を模写しました。
オールドマスターの模写を勧められる
それでもなにか足りない。まだ絵に硬さが残る。どうにも生き生きと描けないのです。悩んだ末に通っていたアトリエの先生に相談したら、オールドマスターの模写を勧められました。
偉大な先人たち(オールドマスター)の作品を模写することで、アナトミーで学んだ知識の復習ができるし、知識を表現に生かす術が分かると言われたのです。
なるほど、きっとぼくの絵は、画面の中で知識が知識のままだから魅力がないのか。
改めて自分の絵を見てみると、『俺はアナトミー分かってるぜ!こんなに頑張ってアナトミーの勉強したから見て!』という主張が大声で聞こえてくる。これはアカン。面白くないはずだ。
そんなこんなでオールドマスターの模写をはじめたのです。
量より質を求めてやってみた
量より質を求めたほうが得るものが多いと思い、ササッと模写するのではなく、デッサンをするように本腰を入れて挑戦。
結果的に、時間をかけるこのやり方が正解でした。30%の完成度のものを100枚描くより、限りなく100%を目指した1枚の方が得られるものが多かったです。
それぞれ2週間ずつ費やして模写しました。画材は木炭。
オールドマスターの模写で気が付いたこと
じっくり描くことで様々なことに自ずと気が付けました。例えば、影や輪郭線などあらゆる線に配慮が行き届いているということ。
直線にしろ曲線にしろ、自分であればワンストロークで一気に線を引きがちな部分に対して、オールドマスターは細かく2つもしくは3種類のアプローチをしている(線に起伏や凹凸などの細かい変化を作っている)。
それらは美術解剖学的(筋肉の形に沿っている)でありながら、かつエネルギーの流れを生み出している。だから今にも動き出しそうに生き生きと見える。
これはいくらモデルさんを凝視しても、なかなか引けるようにはならない線だと思いました。
ひとつひとつの変化はかなり小さいし、線の変化の角度もかなり些細だけれど、それが必要箇所に的確にちりばめられると全体の洗練に繋がる。
ピエール=ポール・プリュードンの模写。青い紙に木炭とホワイトチャコールを使用して、合計約30時間で描きました。
オールド・マスターの模写を2ヶ月継続することで、今まで何となくでしか説明できなかった絵の凄さや魅力といった曖昧な要素が、少しずつ言語化できるようになっていきました。
コピーは車の整備士が、より良い車を作るために、既存の車を分解してその仕組みを学ぶようなものだ。
これはなかなかの言い得て妙。同じことが絵の世界にも当てはまります。みなさんも是非、時間をかけて模写してみてください。髭猿(@art_yusuke)でした!