道具も揃えて目標も掲げたら、まず最初にやるべきトレーニングがあります。
それがblind contour(ブラインドコントアー)と呼ばれるトレーニングです。
これは、紙や手元を一切見ないで、モチーフだけを見続けてドローイングをするという手法で、海外の美大でもよく教えられている、立派な技法のひとつです。
こんな風にしてモチーフだけを見続けます。絵が完成するまで、手元の紙は一切見てはいけません!
え、そんなことしたら、めちゃくちゃ下手な絵になるだけじゃない?
その通りです。
何を描いたんだが分からないくらいのものができあがりますが、それでいいんです。
ブラインドコントアーの目的
この手法には3つの目的があります。
- 下手な絵を描くことに慣れる(紙の上でのフットワークを軽くする)
- モチーフを観察する意識を養う
- 自分の線の特徴(=スタイル)に気が付く
※ここではなにがうまくてなにが下手なのかという議論は一旦置いておきます。
道具も揃え、目標も掲げ、やる気MAXで描いたところで、初心者の人がいきなりかっこいい絵を描けるわけがない。
ぼくもはじめはそうでした。
自分は下手だ、描けないという思い込みは次第に絶望感に変わり、やる気を削ぐ原因になってしまいます。
だから最初にブラインドコントアーでたくさんヘンテコな絵を描いて、描けないということへの抵抗感をなくし、白紙への恐れを消してフットワークよくガンガン描けるようにするのです。
ブラインドコントアーを繰り返すことで、絵も上達する
また、この手法を通してモチーフを観察することの意識も高くなります。
ブラインドコントアーを繰り返しているうちに、まったく手元を見ていないのに少しずつ絵が上達してくるはずです。
手元を一切見ていないのに何故絵がうまくなるか。
それは、絵を描くという行為において、手元のテクニックよりもモチーフをよく観察することのほうが圧倒的に大切だからです。
画面ではなくモチーフをよく見て、大きさ・色・質感・形・重さなど、モチーフのことを理解する時間を増やすだけで、絵は上達します。
絵の初心者はほとんどモチーフを見ず、ずーっと画面だけを見て描き続けることが多いですが、それを矯正するのがこのトレーニングのメリットなわけです。
5分、10分、15分と時間設定をして色々なものを描いてみてください。
花瓶でも、食器でも、風景でもなんでもOKです。友だちと向かい合って顔も描きましょう。
画材はペンやマーカーなど、消えないものがいいです。
写真は絶対に使わないで、必ず本物を見て描くようにしてください!
まずはこれを一週間お試しあれ。
ブラインドコントアーの隠された真実
この方法で絵を描いていると、なんとなく自分のスタイルに気が付くことができると思います。
なぜなら、クラシカルやアカデミックとは程遠いこの手法で生まれるルーズな線は、その人の特徴やクセ、パーソナリティを表しやすいからです。
これって凄いことで、これだけでもブラインドコントアーをやる価値は十二分にあります。
おれ下手だなー、なんて思わずに、自分が描いたものをよく観察して分析して下さい。
ルーズな線って本当に価値がありますよ!
ある程度自分の目が肥えている状態じゃないと気が付けないかもしれませんが、そこにきっと磨けば光るダイヤの原石があるはずです。