人物の絵がうまく描けるようになるには、あちこちで開催されているクロッキー会に毎週参加するのが一番大切ですが、実は家でもできる練習があります。
それが模写です。絵を描くという事は、人物やモチーフという3次元の情報を2次元に転換する行為で、どう描いたらうまく情報を転換できるかという感覚は、問題解決みたいな要素があります。
そして他人の絵は、3次元の情報を2次元に転換したひとつの解です。
模写をすることで、他のアーティストが3次元から2次元へ転換するためにどのように問題解決したのかを学習することができます。
『どんな情報を描写したかったからこの線なのか』
『なぜこの線は太く、こっちの線は細いのか』
という事を考えながら模写すると、非常に描く力が強化されます。
同時に、何を模写するのかということも非常に重要です。ぼくがカルアーツを目指していた頃は、アカデミックとコンセプチュアルのバランスが良い絵を模写するように意識していました。
つまり解剖学的でありつつ(アカデミック)、モデルのポーズを理解・咀嚼し、メリハリやリズミカルな表現がある(コンセプチュアル)絵です。
そこで今日はライフドローイングのスキルアップのために、僕が散々模写してきた本を紹介します。以下に紹介する順番でぼくは模写しました。
ぼくが実際に模写した中で、おすすめの本
Vilppu Drawing Manual
グレン・ビルプさんは、ディズニーや海外の有名な大学でドローイングの指導をするほど世界的に有名なアーティストで、彼のライフドローイングは解剖学的でありながら、ポーズのダイナミックさと生き生きとしたリズムに溢れているのが特徴です。
もうため息が出るくらい美しい。
この本に掲載されている彼のドローイングは短時間で描いたものが多く、体の内側から描かれているプロセスが分かりやすいので、非常にクロッキーの参考になります。
Bridgman’s Complete Guide to Drawing from Life kindle版
他の記事でもご紹介したこの本。ジョージ・ブリッジマンの線も非常にバランスが良く、解剖学的でありながら、リズムやメリハリの示唆に富んだ線は圧巻です。
たぶんこの本を一番模写したかもしれません。もちろん今でも模写しています。
カルアーツのライフドローイングの授業でも参考図書として紹介されました。
ぼくがアナトミーを学んだ先生の先生の先生がジョージ・ブリッジマンということもあり、個人的に胸アツな一冊。
リズムとフォース
アナトミー(美術解剖学)を4ヶ月に渡りほぼ毎日みっちり勉強していた頃、解剖学的なドローイングをする事に拘りすぎて、絵が硬くなってしまった事がありました。
リズムやダイナミックさが欠落していたのです。そんな時に書店で目に飛び込んできたのがこの本。
表紙を見た瞬間に『今の俺に必要なのはこれだ!!』と思い即買いしました。
結果、大当たり。モデルのポーズの意味を理解し、少しデフォルメするような描き方をしている本書は、自分の絵の勢いやリズム、メリハリなどコンセプチュアルな要素を強化したいなら必見の書です!
この本を模写した事により、線の伸びがよくなり、弾力があるような線が引けるようになったと思います。
THE DRAWINGS OF HEINRICH KLEY
これはリズムとフォースの中でも紹介されている本で、ハインリッヒ・クレイというドイツ人アーティストのアートブックです。
彼は解剖学的知識はもちろん、その線にはリズムもダイナミックさもあります。
そして何よりそれらを両立させながら、独自のスタイルを持っているところがこの本の一番の魅力です。
独自のキャラクターや演技をしている動物がたくさん出てきますが、どれも全て、本当に今にも動き出しそうなんです!
どうしてこんな線が引けるんでしょうか。何度も模写して研究したい一冊です!
模写のポイント
最後に、模写する際のポイントですが、ただ絵を見て模写するだけでなく、線をよく観察して下さい。何も考えずに模写しても、模写がうまくなるだけです。
早い線なのか遅い線なのか、太いのか細いのか。線の質や役割を考えながら、なぜここにこういう線を選んだのかを分析しながら模写して下さい。
普通に模写するよりも、圧倒的に技術が上がります!自分でも驚くほどうまくなりますよ!
この記事を読んだ人はこちらも読んでます
- 絵を描いたことがない人ほど参加すべき!クロッキーのはじめ方
- オールドマスタードローイングの模写で学んだこと:カルアーツ合格記08話
- 【2016年版】絶対模写した方が良い。ぼくが最もシビれたアートブック2選