先日都内の美大予備校で2回目となるワークショップをやらせて頂いたので、そのときの内容をシェアしたいと思います。
今回は海外美大受験では重要な要素となるスケッチブックについてのワークショップ。
前提として、スケッチブックはうまい絵を描くためのものではなく、実験をする場であるという事を理解しておきましょう。
アニメーション志望の人はうまく描こうとする人が非常に多く、それはかえってつまらないスケッチブックを生む原因になります。
うまい絵、完成度が高い絵はポートフォリオに入れれば良い。スケッチブックはもっと前衛的な事をしましょう。
という事で、受験生の凝り固まった頭のリミッターを解放すべく、今回のワークショップを開催したわけです。
ワークショップの目的
1.普段見慣れた環境の中で目新しいものや面白いものを発見する
2.スケッチブックで実験的なことをする機会を増やす
以上2点を目的に、指定した描き方でスケッチをしていきます。
使用する道具はスケッチブックとペンがあればOK。持ち運び用水彩セットと水筆があれば最高。
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実践する描き方
以下の方法でスケッチをしていきます。
・ネガティブスペースを描く
・スケールを変えて描く
・コラージュ
本当は外でスケッチをしたかったのですが、当日はあいにくの雨。
しかし室内でも見方を変えれば面白いものは見つかる事を学ぶいいチャンスになったかもしれません。
その1:ネガティブスペースを描く
モチーフそのもののシルエットの事をポジティブスペース、その周りのスペースの事をネガティブスペースと呼びます。
例えばこの街並みを描こうとした場合、ポジティブスペースとネガティブスペースはどこでしょうか。
青い斜線の部分がポジティブスペースで、赤い斜線の部分がネガティブスペースです。
通常、絵を描くとき、大体の人はポジティブスペースだけに注目して描くことが多いです。
しかし今回はネガティブスペースを観てスケッチするというのが最初の課題。
最初はランダムにモチーフを並べて10分×3回のスケッチ。ネガティブスペースに注目して描いていきます。
その次は教室や校舎の中で、面白いネガティブスペースを探してスケッチをしました。
その2:スケールを変えて描く
ペットボトルを人間より大きくしたり、建物を小さくしたり、実際のスケールとは異なる関係性で2つ以上のモチーフをスケッチするという課題です。
スケールを変えて描くことを念頭においてモチーフを探す事で、普段はつまらないと思うような棚や椅子も、ネタにできる可能性があることが分かります。
自分の発想次第で身の回りのモノはいくらでも面白くできるという事に気が付いてもらうのが本当の目的です。
その3:コラージュ
雑誌の切り抜きとドローイングで、空間を表現するという課題です。
ちょっと苦戦している人が多かったですが、コラージュは非常に構図の勉強になるので、是非定期的にやることをおすすめします。
スケッチブックと言えど、やはり構図は大切です。
まとめ
ぼくがスケッチブックで実験的なことをするようになったのは、カルアーツのアニメーション科を卒業し、そのままカルアーツで教授をしていた経験があるアーティストのスケッチブックを見てからです。
それはもう衝撃でした。アニメーションぽい絵なんか一つもなくて、とにかく色んな実験をしまくっていた。
これを見たとき、アニメーション要素どこ行ったの(笑)って思ったけど、よく見たらめちゃくちゃかっこいい。
どのページも画面全体の構成をしっかり考えている姿勢が伝わってきて、彼のスケッチブックは持ち運べる個展みたいでした。
もちろん彼は写実的な絵も非常にうまい。でもその先に行くために、絶えず様々な事を実験していたんです。
この探究的な姿勢があるかどうかが、ただのお絵かき帳とスケッチブックの境目だと思います。
今描けるものを継続して描き続けている停滞感のあるスケッチと、今描けないものを描こうとして前進しているスケッチの違いは一目瞭然です。
自分のスケッチブックがただのお絵かき帳になっていないか、一度冷静に見直してみてください。
ちなみにネガティブスペースを描くという方法はFreehand Sketching: An Introductionという本で紹介されています。
風景や建物の描き方も掲載されていて、前景・中景・後景に分けて描くと簡単にそれっぽくなるという内容です。
洋書なので全文英語ですが、文章は短く使用されている単語も簡単ですし、各ページに毎回4つ前後のイラストが掲載されているので、とても分かりやすい。
僕も付箋張りまくって勉強しました。スケッチが好きな方は是非一読あれ。